広島高等裁判所 平成11年(行コ)4号 判決 1999年11月25日
控訴人
俵原一男
右訴訟代理人弁護士
林隆義
同
服部融憲
同
木山潔
同
吉本隆久
被控訴人
府中税務署長 川名雅和
右指定代理人
勝山浩嗣
同
原田秀利
同
藤本憲三
同
金坂武志
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実
第一控訴の趣旨
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人が平成三年三月一二日付けでした控訴人の昭和六二年分、昭和六三年分及び平成元年分の所得税についてした各更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、昭和六二年分については平成五年五月二四日付け審査裁決による一部取消後のもの)のうち、総所得金額(事業所得の金額)が昭和六二年分については一九二万六八〇〇円、昭和六三年については二〇二万四二〇〇円、平成元年分については二八〇万五四〇〇円をそれぞれ超える部分をいずれも取り消す。
第二当事者の主張
一 当事者の主張は、次のとおり付加するほか、原判決の事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
二 当審における当事者の主張
1 控訴人の主張
(一) 控訴人の営む事業の業種、取引先の特徴、被控訴人の把握した取引先の売上金額の点からみても、控訴人の売上金額はすべて被控訴人の反面調査によって把握されており、被控訴人の把握した収入金額以外には、控訴人の実額反証における控訴人の収入は存在しない。
(二) 被控訴人の把握した控訴人の収入金額に捕捉漏れの可能性はない。
2 被控訴人の主張
(一) 納税者である控訴人が実額主張をするのであれば、被控訴人の主張する収入金額を争わないというだけでは足りない。すなわち、控訴人においては、(1)実際の売上が被控訴人の主張する収入金額を上回るものではないこと、(2)実際の必要経費が被控訴人の主張する必要経費を下回るものではないこと、(3)右収入(売上)と経費とが対応(直接経費については収入との個別対応、間接経費については期間対応)することの主張立証をする必要があるが、これはなされていない。
(二) 推計課税がなされた場合には、課税庁が反面調査等によって把握し得る収入金額の範囲には自ずと限界があり、実際には納税者の収入金額には相当の捕捉漏れがある。
第三証拠
原審の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。
理由
一 当裁判所も控訴人の被控訴人に対する本訴請求は理由がなく、これを棄却すべきものと判断するものであるが、その理由は、次のとおり付加訂正するほか、原判決の理由説示のとおりであるから、ここにこれを引用する。
1 原判決一八頁一〇行目の「第四六号証」の後に「(ただし、乙第三号証ないし第三一号証はいずれも枝番を含む。)」を加え、同行及び一一行目の「柳澤康雄」を「柳澤庸雄」と改める。
2 原判決二五頁七行目の「第三一号証」の後に「(ただし、乙第三号証ないし第三一号証はいずれも枝番を含む。)」を加える。
3 原判決二五頁八行目の「柳澤康雄」を「柳澤庸雄」に改める。
4 原判決三九頁三行目の「入金額を下回らない」を「入金額を上回らない」と、同行目の「必要経費を上回らない」を「必要経費を下回らない」とそれぞれ改める。
5 原判決四四頁六行目の「領収書」の後に「。ただし、以上いずれも枝番を含む。」を加える。
6 原判決四八頁一行目の「第四六号証」の後に「(ただし、以上いずれも枝番を含む。)」を加える。
二 ところで、控訴人は、売上金額がすべて被控訴人の反面調査によって把握されており、被控訴人の把握した収入金額以外には、控訴人の実額反証における控訴人の収入は存在しないと主張する。
しかし、被控訴人が推計の前提として主張する売上額は、反面調査などで把握し得た売上額の最小限であって、控訴人が実額反証により主張すべき売上額の最大限とは異なるのであるから、控訴人としては、被控訴人の右主張額を認めるだけでは足りず、本件では控訴人において帳簿書類を提示しないなど推計の必要がある以上、控訴人の係争年度における正確な一切の帳簿書類を提出し、これにより求められる売上額の総額が洩れない正確なものであることを主張立証すべき責任があるというべきである。そして、控訴人の実額反証は、洩れのない売上総額の的確な主張立証をしない点で失当であるから、右主張は理由がなく採用することができない。
その他、当審における控訴人の主張は前記認定判断(原判決引用)を左右するに足りない。
三 よって、原判決は相当であって本件控訴は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 浅田登美子 裁判官 菊地健治 裁判官 河野清孝)